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ペットの心肺蘇生法:消防士、救急隊員、レスキュー隊員編

消防士、レスキュー隊、救急隊員、消防団の方々が消防現場でペットを助けるための基礎知識

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「えっ、消防士が現場でペットを助けるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんので、今回は、まず「なぜ、消防士がペットを助けているのか?」をお話しいたします。

私がレスキュー隊現役時代から、さまざまなシチュエーションでペットレスキューを行っていました。もちろん、災害現場では飼い主の人命救助を優先しますが、飼い主が不在の場合や飼い主から依頼された場合等はペットのみのレスキューも行っていました。

ほとんどの先進国では、当たり前に消防士達が火災現場や水難現場、アイスレスキューなどでペットレスキューを行っています。

・火災現場からのキャットレスキュー

・凍った湖でのドッグアイスレスキュー

・土砂災害現場からのアニマルレスキュー

では、日本ではどうでしょう?

東京消防庁の平成26年度中「消防署別危険排除等活動状況」によると、哺乳類に限ったレスキュー等事案だけで毎年約500件~600件出場しています。

第67回東京消防庁統計書(平成26年)
第42表、消防署別危険排除等活動状況
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kikakuka/toukei/67/
( ※消防統計上はアニマルレスキューや動物救助とも呼ばれている)

東京消防庁に内訳を電話してみたところ、具体的には下記のように分かれるそうです。

①「災害現場」におけるペットレスキュー

  • 火災現場で飼い主と一緒に煙に巻かれて窒息状態、やけどを負ったペットの救助と救急
  • 土砂崩れによって飼い主と一緒に生き埋めになっているペット
  • 水難事故で飼い主と一緒に溺れてしまったペット
  • 交通事故で飼い主の運転手と一緒に車両に挟まれ、骨折による副子や止血が必要なペット
    など

②「危険排除」「事態回避」「災害予防」のためのペットレスキュー

  • 洪水時に中州に取り残された犬
  • 遊んでいて壁に挟まった犬
  • 塩ビパイプを首にはめられて取れなくなった犬
  • 高所から降りることができなくなった猫
  • マンホールに落ちた猫
  • 鉄柵から首が取れなくなった犬
    など

なお、出場条件として、『出場時は緊急走行はしない』『火災や交通事故等、緊急な人命にかかわる災害を優先するため、作業が途中でも災害出場してしまう』『長期間の保護、飼育等を行うことができない』等のことを通報者や関係者に理解してもらったうえで対応しているようです。

なぜ、消防がペットレスキューを担当するかというと。。

消防が動物が関係する「危険排除」「事態回避」「災害予防」活動を行うことになるのは、市役所の中に、特定の動物レスキュー部門がないため、同じ市区町村の行政から依頼されることも多いからです。

また、救出活動にともなう危険箇所(高所・低所・閉所・狭隘)での活動は、救助資機材を持っていない一般職員や警察官では、危険と判断され、安全管理の面からも、救助資機材を有し、日々、救助訓練を行っている、消防に依頼が来るためです。

消防現場において、ペットに対して救急救助活動を行う根拠について

法律の専門家に確認したところ、法律上、ペットは共有財産(共有動産)または、特有財産(特有動産)であり、災害により被災したペットは、消防法第1条の目的の「火災からの保護、災害による被害の軽減」の対象になるとのこと。

消防法 (目的)
第1条 この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び【財産】を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。

また、日本以外の先進国のほとんどでは、消防機関がペットの救助や応急処置を行うことが、消防法や災害対策基本法や動物愛護法、市町村条例などに明記されています。

特に、ペットレスキュー先進国のアメリカでは消防士、救助隊員、救急隊員のための動物救急救助トレーニングコース、BART(Basic Animal Rescue Training)が全米の常備と非常備の消防士約100万人に対して、2004年から、具体的なペットレスキュートレーニングを開始しています(http://basicanimalrescuetraining.org/)。

さらにイギリス、カナダ、フランス、ドイツなど、世界の消防界におけるグローバルスタンダード(国際基準)では、どのような災害現場においても、人命救助が最優先であるが、その次に、ペットの応急処置、救助、救命活動が行われています。

そういった近年の世界的な消防事情や日本のペット社会背景からしても、日本の消防が災害現場において、ペットを救助したり、応急処置をしたりすることは、法的な正規の行政サービス内の行為だと受け取られると思います。

ペットが急増している現在、早急に消防士のためのペット・レスキュー・トレーニングの必要性が増してきていると感じますので、「消防関係者のためのペット救急法」をご紹介し、ぜひ、日本の消防士の方々に現場で、もし、ペットが心肺停止だったらCPRを、やけどしていたら応急処置を、骨折していたら副子を当てるなどの救急処置をしていただけたらという願いから、書かせていただくことになりました。

日本のペット事情と災害の関係

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平成25年度 全国犬・猫飼育実態調査 結果によると、日本全国の犬・猫 推計飼育頭数全国合計は、約2,100万頭(犬が約1,100万頭、猫が約1,000万頭)で、約6人に1人が犬か猫と暮らしていることになります。

また、調査結果によると、犬猫と暮らしている人たちにとって ペットは「家族」と同じくらい「生活に喜びを与えてくれる大切な存在」、また「健康面や精神面、及び人と人とをつなぐコミュニケーションにおいても重要な存在である」ことが明らかになっています。

アメリカで行われた国民インタビュー結果では、「もし、火災現場からの救出活動で、飼い主だけが助かり、ペットがなくなったら、その飼い主は死ぬほどつらく、ペットロスなどのトラウマになるばかりか、また、同じところには住みたくないほど、悲しい人生を歩み続けなければならない」という内容の答えが多く、「消防士がペットの命を救うことの大きさ」が社会的に注目を浴びています。

我が国では、27年9月10日に発生した、鬼怒川氾濫決壊の際、自衛隊のヘリコプターが要救助者と犬をホイスト救助したニュースが多く視聴者の心を動かしました。

自衛隊法第83条などに詳しくない少数の人たちが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、自衛隊が犬を助けたことについて「動物を助けることはルール違反」と1人の男性が指摘したところ、数万人が、「犬も家族だ!」「犬も助けるべき」「くだらないルールに縛られるべきではない」などと一斉に物凄い勢いで反発し、ネット上で大炎上したこともありました。

消防士がペットを助けることについて、消防法第1条で明確に目的の一つとして確認できたとしても、いろいろな考えや思いを持つ方がいらっしゃって当然だと思いますが、やはり、助かる命は助けて欲しいと心から思います。

消防士の皆さん、どうぞ、よろしくお願いします。 ここにご紹介したコンテンツは、私がインストラクターとして所属している2つの団体、アメリカ最大のペット救急法指導団体であるPetTechのThe PetSaver™ Program、そして、消防士のためのペット救急法指導団体、BART(Basic Animal Rescue Training)ら出典しています。

PetTech
http://www.pettech.net/
BART(Basic Animal Rescue Training)
http://basicanimalrescuetraining.org/

BARTのブログで紹介されました。
http://goo.gl/ZoJoX6

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